destiny


――もしもあの時呼ばれたのが私じゃなかったら。


「元気ないみたいだね。どうかしたの?」
30世紀に戻ってからちびうさは
毎日のようにエリュシュオンの祭司エリオスの元を訪れていた。
いつもは明るく笑っているちびうさがふさぎこんでいる様子なのがエリオスにはひどく気にかかった。
「……ねえ、エリオス」
「なに?」
「美しい夢の持ち主だったらペガサスの宿主は誰でも良かったの?」
「えっ!?」
ちびうさは驚いて硬直してしまったエリオスの体を
ゆさゆさと揺さぶる。
「美しい夢さえ持っていればあたしじゃなくても良かったの?」
エリオスの服を掴む手に力がこもる。
「エリオスはあたし以外の人にも
キスしたりしてたかもしれないって事なの?」
「え、えーと……」
ゆさぶられながらエリオスはおろおろと視線をさまよわせる。
「ねえ答えてよー」
ついに観念してエリオスは口を開いた。
「……実は宿主自体はちびうさちゃんの言うとおり誰でも良かったんだ」
ちびうさの大きな瞳が不安げに揺れる。
「そうかもしれない」と思いながらもそうではない事を
心のどこかで祈っていたのだ。
うつむいてしまったちびうさの顔を覗き込むようにして
エリオスが言う。
「でも、ちびうさちゃんじゃなければ好きになったりしなかったよ」
「本当に?」
ちびうさの瞳に浮いた涙をぬぐってやりながら
ゆっくりとエリオスは頷いた。
それが嘘ではない事は彼の表情から見て取れた。
「……えへへ」
照れたように笑ったちびうさをひょいと抱き上げてエリオスは立ち上がった。
「さあ、そろそろ帰らなきゃ」
「もう?」
「キングやクイーンを心配させるわけにはいかないからね」
「別にいいのに」
「そういうわけにはいかないよ」
言いながらちびうさをペガサスに乗せる。
そして自らもそれに乗り、彼女がペガサスから落ちないように
しっかりと抱えてクリスタルトーキョーへと向かった。

「明日も絶対に来るからね。いい?」
「もちろん」


――もしもあの時呼んだのが君以外でも、僕たちはめぐり合っただろう。
それが運命というものだから。





エリちびって書くの、本当に難しいです。。


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