037:スカート 着替えを終えて鏡の前に立つ。 今日は、大輔くんとデートの日。 鏡に映る自分を念入りに点検する。くるりと一回転してもみる。 その拍子によそいきのスカートがひらりと揺れた。 ……なんか、やだな。 もちろんそれは私が大輔くんとデートする事に対してではない。 あれは私から誘ったのだから。 大輔くんの所属するサッカーチームでOB対現役と言う事で お兄ちゃんたちのチームと大輔くんたちが試合する事が決まり 「どうしよう俺自信ねえよ……」ってあんまり大輔くんが おろおろするものだから、つい言ってしまったのだ。 「もし大輔くんたちのチームが勝ったらどこかに遊びに行こう」と。 そしたら大輔くんは途端にやる気を出し、普段の倍以上に練習をこなして 本当にお兄ちゃんたちのチームに勝ってしまったのだ。 お兄ちゃんは「あれは手を抜いたんだ!」って言い張っていたけれど、 とにかく勝ちは勝ちだ。それに、私はあの試合で 生まれて初めてお兄ちゃんの敵チームを応援したのだ。 別に大輔くんとのデートは嫌ではないのだ。 私が嫌なのは、大輔くんとのデートで こんなにうきうきとおめかしをしてしまう自分自身だ。 よそいきのスカートなんかはいて、ちょっとだけお化粧なんかしちゃって。 これじゃまるで大輔くんの事を好きみたいだ。好きだけど。 ……なんか、やだな。恥ずかしいもん。 ため息をついて、それでも髪の毛を手櫛で整えることは忘れないで 私は家を出た。多分約束の時間の五分前には着くだろう。 「ヒッカリちゃーん!」 約束の場所に大輔くんが先に来ていたので驚いた。 みんなで集まる時は大抵遅れてくる人なのに。 「チビモンは?」 「置いてきた!」 あっさり言うので苦笑してしまう。私も京さんの家に預けてきたんだから 似たようなものだけど。 今ごろポロモンやウパモンと遊んでるかな、と思いを馳せていたら 大輔くんにじっと見られているのに気付いた。 「な、なに?」 「何かヒカリちゃんいつもと雰囲気違うような……」 見つめられて視線を落としたらスカートが視界に入った。 ぴらぴらしたプリーツスカート。 「なんか変?」 耐えられなくなって思い切って聞いて見た。 「ぜ、全然!」 照れたように大輔くんが叫んだのでちょっとほっとした。 そしてほっとしたついでに話題を変えることにする。 「それより大輔くん、今日はどこに行くの?」 「ヒカリちゃんはどこに行きたい?」 それはつまり、私の行きたい所に合わせてくれるって事だろうか。 少しだけ考えて再び口を開く。 「買いたいものがあるから、お店見て回りたいな」 本当はそれは今度1人でゆっくり見ようと思っていたのだけど、 大輔くんと一緒に見て回る方がいいな、と思った。 「じゃあ、行こうか」 もしまたこうやって2人で出かける機会があったら、 今度は手を繋ぎたいな。よそいきのスカートもはいて。 大輔くんと並んで歩きながら、そう思った。 ありがち。 デジモンはまだ好きです。でもあれ以上書けないような気もしてました。 実際はどうだったんだろうなあ……こうやって(人に用意された題でとはいえ) デジモンで書いてるのも事実だし。それでもって私が 伊織や光子郎はんより大気さんに惚れて(笑)いるのもまた事実。 人生って難しいなあ。 BACK...TOP |