1月3日


3日続いた新年祭も、もうそろそろ終わりのようだ。
ちびうさは壁際に設置されているふかふかしたソファに身を沈めた。
少しくらいなら楽しいパーティも、長時間続くといい加減疲れてくる。
「疲れましたか?」
顔をあげると、そこには心配そうな表情のセーラープルートが
カクテルグラスを持って立っていた。
「どうぞ」
「ありがとう」
受けとったカクテルグラスに口をつけながらちびうさはあたりを見回す。
「誰かお探しですか?」
「え、えっと……そういうわけじゃないんだけど……」
慌てて立ち上がる。
詮索されるのはちょっと恥ずかしかった。
「ちょっとあたし、外に行ってくる。ごちそうさま」
「……スモールレディ?」
空になったグラスを押し付けられ、残されたプルートは一人首をかしげた。


庭園まで来て、ちびうさは大きく深呼吸した。
ここからだと人の出入りがよくわかる。
今帰っていくのはネオクイーンセレニティの古い友人だという
キンモク星のセーラー戦士と皇女だろうか。
ちびうさはあまり彼女達と会話を交わしてはいなかったが、
それでも悪い人ではないというのは感じ取れた。
機会があったらじっくり話したい。
そんな事を考えているちびうさの後姿に、声がかかった。
「ちびうさちゃん」
目を見開いて硬直しているちびうさに、エリオスはゆっくりと歩み寄る。
「お久しぶり」
駆け出したいのを必死でこらえてちびうさはうやうやしくお辞儀をした。
立派なレディらしく。
エリオスと離れてからずっと、そして今も心の中でそう唱えていた。
その成果はどれくらいあったのだろうか。
「……驚いた」
見上げたエリオスの表情は、まぶしい物を見るようなものに変化していた。
そして、ちびうさはそれに吸い寄せられるようにして
エリオスの胸に飛び込む。
「エリオス、あたし、ちゃんとレディらしくなってた?」
「うん」
「エリオスと別れてからずっと、
ずっとちゃんとしたレディになれるようにって頑張ってきたんだよ」
「そうみたいだね」
エリオスは先ほどのちびうさの姿を思い出して微笑んだ。
「見違えたよ」
「……うん」
照れてしまったのか顔を上げようとしない
ちびうさの頭を優しく撫でながらエリオスは語りかける。
「明けましておめでとう。……多分今年もそんなに会えないと思うけれど、
せめて今夜くらいは一緒にいよう」
返事の代わりに、背中に回した腕にきゅ、と力がこめた。





好きカップリング投票アンケートで
エリちびに票を入れてくださった皆様方に捧げます。

エリちびの間には10世紀の差がありますよね。
その辺が凄く扱いが難しい、というか
例えばこの話だとSS編終了後から会えなかったのが
お正月のこの日に再会できた、っていう設定なんですが
30世紀に戻っていったちびうさはともかく
20世紀のエリュシュオンでずっと再開の時を待ち続けたエリオスは
もの凄く辛かったろうな、と……「お久しぶり」なんて
余裕で言ってる場合じゃないですよ。
そんな事を思ってしまうとただでさえ滞りがちな筆がますます進まなく。
以上、言いわけでした。

どうでもいいけどキンモク星のセーラー戦士は
もうちょっとしっかり出したかったです(笑)。


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